[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : 「…………」

[メイン2] セッカ : あの姉を名乗る心愛とかいうのを追って駆けだした私である。

[メイン2] セッカ : しかし。

[メイン2] セッカ : 決して私の足が短いのとか、そういうのではないが。

[メイン2] セッカ : 追いつけなかった。見失った。

[メイン2] セッカ : 気付けばここがどこか分からなかった。

[メイン2] セッカ : 後ろを見る。誰もいない。

[メイン2] セッカ : 「なるほどな」

[メイン2] セッカ : 「あいつら全員迷子になったのか……仕方ないやつらだ」

[メイン2] セッカ : 間違いなく迷子になってるのはセッカのはずだがセッカは自分が正しいと信じていた。

[メイン2] セッカ : ……しかし本当にここはどこなんだ。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……お約束のボケだな」
呆れたような顔をして、歩いてくる

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「迷ったのは、俺とお前で……置き去りになったみたいだな」

[メイン2] セッカ : 「!」
声に反応

[メイン2] セッカ : 「お前は…………」

[メイン2] セッカ : 「アスリートとかいうやつ!」

[メイン2] セッカ : 「あとセクハラしてたやつ!」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「アシュレイだよ、セクハラもしてない!!失礼だな!!!」

[メイン2] セッカ : 「なにぃ……」

[メイン2] セッカ : 「でもお前、年下の女に水浴びの事情を聞いていただろ」

[メイン2] セッカ : これはセクハラだ。
アシュレイなのは……言い訳できないけど。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……確かに、そうかもしれないけど、普通心配するだろ」

[メイン2] セッカ : 「そんなにおかしかったか……?」
あのあかりとかいうのはむしろ私の常識に近いので違和感はなかった

[メイン2] セッカ : 「というか」

[メイン2] セッカ : 「ボケてない!!!」

[メイン2] セッカ : 今更だが。ボケてはない!!

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「反応が遅いな……!?」

[メイン2] セッカ : 「ふん…………」

[メイン2] セッカ : 「でも私と一緒にいないのはあいつらなんだから、あっちの方が迷子だろ」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「いや、そのりくつはおかしい」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : ココアさんが引率役な以上、それが見当たらないこちらが……言わずもがな 迷子だった

[メイン2] セッカ : セッカの目線はセッカ中心である。よってセッカは常に迷子ではない。

[メイン2] セッカ : 「……しかしお前は思ったよりやるやつだな。一人だけはぐれず私に付いてくるとは」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「一緒に迷子になっただけなんだけどな…」

[メイン2] セッカ : 「なんだとぉ……」

[メイン2] セッカ : 「…………」

[メイン2] セッカ : しかしよく考えてもみれば3人と2人のどちらかが迷子と言われれば微妙なところだった。

[メイン2] セッカ : 狐が尾が多い方が強いように群れも数が多い方が本体であり、少ない方は”はぐれ”なのではないか。

[メイン2] セッカ : 「……えっ、迷子なのか」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「今更か!?」

[メイン2] セッカ : 「迷子はまずい。合流しないと……」

[メイン2] セッカ : 「……でもあいつら、どこにいるんだ??」

[メイン2] セッカ : ぴょんぴょん、辺りを見回そうとするが全然何も見えなかった。
周りの物は大体私より背が高い。

[メイン2] セッカ : くそが……!

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……えーっと、代わりに探そうか?」

[メイン2] セッカ : 「…………」

[メイン2] セッカ : 「…………」
これは、かなり、屈辱的……

[メイン2] セッカ : 「…………やってくれ」
ぼそり

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「よし、それじゃあ代わりにっと…」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 辺りを見回しているが……付近にはいないらしい

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「…残念だけど、この辺りにはいないみたいだ」

[メイン2] セッカ : 「むむ……!!」

[メイン2] セッカ : 「仕方ない。適当にうろつけばその内見つかるだろう」

[メイン2] セッカ : 「何せ私たちは目立つらしいからな」

[メイン2] セッカ : 周囲に気をくばる。隣人だかなんだか知らないけど気分は良くない。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「…まあ、明らかに違う格好してるからな」
ココアさんは、元気がいいから目立っているだろうし

[メイン2] セッカ : 「見つかるまで、そうだな……」
首を少し傾ける。

[メイン2] セッカ : 「退屈だからアシュレイの話でも聞かせろ」

[メイン2] セッカ : 単純に退屈なのもあるが。
なんだか知らないけど私の常識は比較的ズレているようなのでそこも埋めたかった。

[メイン2] セッカ : 「なんかないのかお前」

[メイン2] セッカ : ちらりと見上げる。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「なんか……と言われると、話すことに少し困るな……何が聞きたい、とか。絞ってもらえるか?」

[メイン2] セッカ : 「むっ」

[メイン2] セッカ : 「……じゃあお前がいた世界の話だな、うん。それがいい」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「俺のいた世界は……」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「星辰体っていう、不思議な素粒子が流れてきてるんだよ、それを源にして、戦う人達がいた」

[メイン2] セッカ : 「魔力……みたいなもんか」
ふんふん。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「魔力……って、セッカの世界では魔法があるのか?」

[メイン2] セッカ : 「?」

[メイン2] セッカ : 「当たり前だろ」
何言ってんだ。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……驚いたな、いや。魔法が存在する世界だって、あってもおかしくはないんだけどさ」

[メイン2] セッカ : 「当たり前じゃなかったのか……」

[メイン2] セッカ : これは予想以上にズレてるらしい。

[メイン2] セッカ : 指先を一本立てて……

[メイン2] セッカ : 「”狐火”」

[メイン2] セッカ : 小さく、緑色の炎が灯る。

[メイン2] セッカ : ふ、とすぐに吹き消すが。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「なるほど……これが魔法か…」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 仕込みのような物は見えず、星辰体の反応は検知できなかった

[メイン2] セッカ : 「こういうのがある。まあ私が使うのは妖術とか呼ばれて……少しズレているかもしれないが」

[メイン2] セッカ : セッカの世界では魔法、妖術……もしかしたらアシュレイの世界では伝承として伝わっているかもしれない怪物たち。
それらが皆、西洋東洋など文化の区別なく集っては常に争いを続けている。

[メイン2] セッカ : 自らが最強だと誇示するため。

[メイン2] セッカ : 「その星辰体ってのは……なんだ、魔法となんか違うのか」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「高位次元から流れ出てくる粒子の一つ……と言われていて、俺たちの世界に、いろんな変化を齎した物なんだ」

[メイン2] セッカ : 「実際、それで何ができるんだよ?」

[メイン2] セッカ : むずかしいことばっか並べやがって。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「例えば…」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「焚き火ってあるだろう?」

[メイン2] セッカ : 「うん」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「火を焚き続けるには、薪を放り込み続ける必要があるんだけど……」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「俺がいた世界では、放り込む薪が他の世界より少なくて済む……エネルギー効率が、良くなってるんだそうだ」

[メイン2] セッカ : 「ほう」

[メイン2] セッカ : 「…………それ。魔法となにが違うんだ??」

[メイン2] セッカ : 魔法だって小さい薪で大きい炎を作るくらいできる。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「うーん……魔法が、意図的に起こせることなら」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「俺達の場合は、元に戻せないことかな」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「星辰体は、世界中のあらゆる物に宿ってた、だから……好きな時に、邪魔だから取り除くことは、できない」

[メイン2] セッカ : 「ほええ~……」

[メイン2] セッカ : 「……なんかあんま良くなさそうな言い方だな」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「まあ、これ由来の技術には酷い目に遭わされてもいるからな……欠点も多い」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「例えば、金属の性質を変えてしまうこと、これのせいで……コンピューターっていう便利な道具が全く使えなくなったんだ」

[メイン2] セッカ : 「ほうほう……」

[メイン2] セッカ : 「やっぱりお前はあんまりその星辰体とかいうの好きじゃないんだな」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……好きか、嫌いかと言われると、困るんだよな」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「星辰体があったおかげで、出会えた仲間もいる。そういったことを考えると……複雑、と締め括るのが、一番かな」

[メイン2] セッカ : 「ふうん?」

[メイン2] セッカ : 「よく分からん」

[メイン2] セッカ : 「私はそんな便利そうなのがあるならははさまの敵だってぱぱっと……」

[メイン2] セッカ : 使えるものがあれば使うだけだ。
力なんてある方がいいに決まってるのに。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……セッカのいた世界は、敵が、多い世界なのか?

[メイン2] セッカ : 「敵しかいない」
端的に。

[メイン2] セッカ : 「むしろ、こっちだとそうじゃなくて驚いた」

[メイン2] セッカ : 「私の世界なんてずっとそんなもんだ。誰もが絶望する暗黒の世界」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……大変。だったんだな」

[メイン2] セッカ : 「…………」

[メイン2] セッカ : 一瞬言葉に詰まる。が、すぐに。

[メイン2] セッカ : 「ははさまがいるから大丈夫だ!」

[メイン2] セッカ : 「……ははさまが待ってるから早くこの夢からも覚めないとな!」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……ははさま、か」

[メイン2] セッカ : 多分ここもその内覚める夢だろう。
ずっと変な、悪い夢ばかり見てたから。
誰かがちょっとだけ良い夢を見せてくれたに違いない。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「なあ、セッカお前のお母さんってどんな人なんだ?」

[メイン2] セッカ : 「!! ははさまはすごい人だ!!」

[メイン2] セッカ : 「誰よりも強いし!私にも優しくしてくれる!!」

[メイン2] セッカ : 「……に違いないし!」

[メイン2] セッカ : 「きっと私をずっと守ってくれる!」

[メイン2] セッカ : 「……はずだ!」

[メイン2] セッカ : すごいだろ!

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……なんだか、さっきから憶測ばっかりだな」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「何をしてくれたんだ?セッカのお母さんって」

[メイン2] セッカ : 「え」

[メイン2] セッカ : 「…………」

[メイン2] セッカ : ……無い。

[メイン2] セッカ : 考えて記憶を掘り起こして……

[メイン2] セッカ : その上で。何も思い出が無い。

[メイン2] セッカ : 一番、最初の、記憶は…………

[メイン2] セッカ : ……頭を振る。

[メイン2] セッカ : 「は……ははさまは、ははさまだ!」

[メイン2] セッカ : 「それでいいだろっ……!」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「それは……俺に向かって言ってるのか?」
「それとも…」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「自分を、無理に納得させようとしてるのか?」

[メイン2] セッカ : 「……! ……!!!」

[メイン2] セッカ : 声にならない声が喉の中に渦巻いて。

[メイン2] セッカ : 「……うるさい!!」

[メイン2] セッカ : 「お前は……大噓吐きだ!わけのわからないこと言って、私を騙そうとしてる!」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……セッカ、少し落ち着いて聞いてくれ」

[メイン2] セッカ : 「嘘は……聞きたくない!」

[メイン2] セッカ : 世の中嘘吐きばっかで。
そう、目の前のこいつだってそうでしかないんだ!

[メイン2] セッカ : だってこいつの言うことは!
私の信じてるのとこんなに違う!

[メイン2] セッカ : 虚言、欺瞞! そんなことばかり。
もうたくさんだ……!

[メイン2] セッカ : 嘘……嘘。こいつが私に!

[メイン2] セッカ : ……『それとも……』

[メイン2] セッカ : 私が、わた……

[メイン2] セッカ : 知らん。

[メイン2] セッカ : 「…………っ」

[メイン2] セッカ : だっ。

[メイン2] セッカ : 何から逃げてるかも知らないが。

[メイン2] セッカ : 私はとにかく逃げ出した。

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「セッカッ!」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 手を伸ばすものの、小さな背中はあっという間に離れていって……

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : 「……放って置けるかッ!」

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : また、アシュレイも走り出した。
奇異の視線を受けながら、多くの人を掻き分けて

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン : ……少し、自分に似ているような。そんな気がする少女を追いかけて

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン :  

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン :  

[メイン2] アシュレイ・ホライゾン :  

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : 逃げる

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : 逃げる

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : 何かを置き去りにした気がする

[メイン2] セッカ : でも

[メイン2] セッカ : 目は向けなかった

[メイン2] セッカ : どうせ

[メイン2] セッカ : ”嘘を吐く”

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : …………

[メイン2] セッカ : 周りを見る 知らないところだ

[メイン2] セッカ : 薄暗いし狭い路地裏
私の世界ではいつもこんなところに隠れていた気がする

[メイン2] セッカ : ……迷子?

[メイン2] セッカ : 自分から逃げて置いてそれもない

[メイン2] セッカ : いつもいるみたいなところだから
いつもやってるみたいに膝を抱えて隅に座ってる

[メイン2] セッカ : ……自分の温もりがあるだけマシな気分になれるから

[メイン2] 朔月 美遊 : そんな路地裏に、はあはあ、ぱたぱた。

[メイン2] 朔月 美遊 : 焦りの表れのような音が響いて。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……急に逃げて、どうしたの……?セッカさん」

[メイン2] セッカ : 「…………」
顔を上げる。
思ってたのと違う顔だ。

[メイン2] 朔月 美遊 : そう、先ほどの話。
継星さんと一緒に温泉へと向かおうとしていた時の話。

[メイン2] 朔月 美遊 : 知っている顔が知っている顔を追いかける逃走劇。
せっかくだし、合流しようと思っていたのに、彼女を追いかけているうちに……

[メイン2] 朔月 美遊 : 継星さんとも離れてた、みたいで。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「…えっと、私は大丈夫!武器とかそういうの…持ってないから!」

[メイン2] セッカ : 「…………そんなの心配してない」
ぶっきらぼうに。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「だから逃げなくてもいい、と思うんだけど…どうかな?」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……そ、っか……」
辺りを見まわす。

[メイン2] セッカ : 「……逃げたのは、あいつが嘘を吐くから。嫌なことばかり言ってくるから」

[メイン2] 朔月 美遊 : 薄暗いし狭い路地裏
私の世界では見たことも訪れたこともない

[メイン2] 朔月 美遊 : ……あいつ……アシュレイさんのことかな。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……でも、あの人…真面目そうな大人、っぽくて嘘なんて吐かないんじゃないかな」

[メイン2] 朔月 美遊 : 好奇心もあったのか、その路地裏に腰を下ろして。

[メイン2] セッカ : 少し顔が俯いて横目に美遊を睨む。

[メイン2] セッカ : 座ってきたのも止めない。
なんだかこれ以上走る気力もない。

[メイン2] セッカ : 「……知らん。嘘吐きの考えることは、分からない」

[メイン2] セッカ : 「分からないから、嘘なんだ」

[メイン2] 朔月 美遊 : 睨まれることに首をかしげる。
どう思われてるんだろう……

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……わからないから、嘘……」

[メイン2] 朔月 美遊 : ……なるほど、それも確かに。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「じゃあ……あの人、アシュレイさんは…どんな嘘を言ってたの?」

[メイン2] セッカ : 「……ははさまを、悪く言って」
ぼそぼそと。

[メイン2] セッカ : 「……皆嘘ばかり吐いて、ははさまだけが信じられるもので」
元の世界でのことだ。

[メイン2] セッカ : 「なのに、ははさまを……ははさまが……っ!」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「ははさま……なるほど…お母さんの事を悪く言われちゃったんだね」

[メイン2] 朔月 美遊 : ぼそぼそと聞こえる声、でもしっかりと聞く。

[メイン2] セッカ : 頷く。そのまま抱えた膝に顔を埋める。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「私は……お母さんの事、思い出せないけど……お兄ちゃんの事、何か言われたら……怒りたくも、なっちゃうしね」

[メイン2] セッカ : 「うん…………」

[メイン2] セッカ : 「……お前、その”お兄ちゃん”とか言うのと思い出はあるのか」

[メイン2] セッカ : 顔を隠したまま尋ねる。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……うん、”今”の私がこう形作られてるのは、お兄ちゃんとの思い出があるから」

[メイン2] 朔月 美遊 : 顔を隠したままの彼女に、横を向いて。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……セッカさんは、思い出せない…のかな」

[メイン2] セッカ : 「……うん。思い出せないのか、初めから無かったのかなんて分からないけど」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「でも、セッカさんにとって……大切なひと」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「そう、なんでしょ?」

[メイン2] セッカ : 少しだけ首が縦に動く。
肯定と言うにはあまりに弱気だった。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「それなら、私は……それでもいいと思うよ」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「最初からなくっても、思い出せなくても……その人がセッカさんにとって、大切な人……その思いは、確かに……」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「『本当』なんだと思う」

[メイン2] 朔月 美遊 : 体育座りのまま、そう呟く。

[メイン2] セッカ : 「……私は」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……うん」

[メイン2] セッカ : 「わたしはっ……!!」
声を絞りだすみたいに

[メイン2] 朔月 美遊 : ちらり、とセッカの方へと向く。

[メイン2] セッカ : 「それじゃ……っ、よくない!!!」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「………!」

[メイン2] セッカ : 涙が出て喉が詰まって酷い声だ

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……セッカさん……」

[メイン2] セッカ : 「ずっと、ははさまの他に信じられる友達も仲間も何もない!!」

[メイン2] セッカ : 「ははさまがいなきゃ、わたし、ひとりで……っ!!」

[メイン2] 朔月 美遊 : ……”泣く”。私は体験してないけど、本や漫画で……何より。

[メイン2] 朔月 美遊 : ……ついさっき、それ程高ぶった人を見てしまったから。
だからこそ、他人事にも何でも思えない。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……じゃあ」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「セッカさんは、”一人”が、寂しい?」

[メイン2] セッカ : 「さみしいにっ!! 決まってる、だろっ……!!?」
ぼろぼろ

[メイン2] セッカ : 「…………な の に ! ! !」

[メイン2] セッカ : 「ははさままで”嘘”だったら!!」

[メイン2] セッカ : 「わたし──」

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : 「一人で取り残されたみたいだ!!!」

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : 狭いこの場所に響くくらい大きな声で
思ってることを喚き散らす

[メイン2] 朔月 美遊 : その慟哭に、思わず目を伏せる。

[メイン2] 朔月 美遊 : それは文や絵では決して伝わらない、感情そのものだったから。
ありったけのものをぶつけられて、ぐっと震えさせられてしまった。

[メイン2] 朔月 美遊 : でも。

[メイン2] 朔月 美遊 : ゆっくりと、顔を上げて。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……私は、そうだった」

[メイン2] 朔月 美遊 : 優しく小さく答える、この狭い場所なら届くから。

[メイン2] セッカ : もう声じゃない呻きを鳴らして美遊を僅かに覗き見る

[メイン2] 朔月 美遊 : 「…さっき言ったお兄ちゃん」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「ずっと、私の面倒を見てくれて……勉強も、常識も……」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「閉じ込められて、外を知らない私に教えてくれた大切な人」

[メイン2] セッカ : ぐすっ ずびっ

[メイン2] セッカ : 時々鼻を鳴らして、でも耳だけ動かして話に耳を澄ませている

[メイン2] 朔月 美遊 : 血も繋がっていない。私以外の家族が全員死んで、その時助けてくれた人。
私の全ては、あの人と知り合って作られていたもの。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……でもね、ある日。エンブレイスに巻き込まれて、世界諸共、お兄ちゃんもどこかへ」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「私はこの世界に行って、結果。”一人で取り残された”」

[メイン2] セッカ : ……そんなの、そんなのっ……!

[メイン2] セッカ : いまのわたしみたいなもんじゃんか……!!

[メイン2] 朔月 美遊 : そこまで言い切った後。

[メイン2] 朔月 美遊 : 落ち着かせるために、セッカの頭を優しくなでる。

[メイン2] 朔月 美遊 : お兄ちゃんが、私によくやってくれたことだ。

[メイン2] セッカ : びくり

[メイン2] セッカ : 他人に頭を預けるとかふつうはあり得ない

[メイン2] セッカ : なのに
なんでか 振り払えない

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……じゃあ、セッカさんは……ははさま以外の、仲のいい人……作りたい?」

[メイン2] セッカ : 「わかん、ない……」

[メイン2] セッカ : ずっと世界は、他人は、二つだけだった
信じられる”ははさま”と信じられない”ははさま以外”

[メイン2] 朔月 美遊 : 逃げてしまってもいいのに、それを振り払ってくれないセッカに。
嬉しいな、と思いながら。

[メイン2] セッカ : だから信じられる”ははさま以外”なんて想像もしてない

[メイン2] セッカ : 「わかんない、けど……」
零れ落ちるみたいに

[メイン2] 朔月 美遊 : 「うん、うん」
お兄ちゃんみたいに、優しく

[メイン2] セッカ : 「……一人は」
怖くて寒くて寂しくて悲しくて冷たくて苦しいのは

[メイン2] セッカ : 「いや、だ」

[メイン2] セッカ : 零れ落ちるみたいに、それだけのことをぽつり

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……うん」

[メイン2] 朔月 美遊 : ずっと独りで、誰にも理解されないで、周りは嘘だらけ。
違いばかりのこの世界だけなのに、きっとセッカさんは……元の世界からして、そう。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「それなら多分、大丈夫」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「私も、セッカさんも……同じ、取り残された一人」

[メイン2] セッカ : ぴくりと さっきも聞いたような言葉に耳が動く

[メイン2] 朔月 美遊 : 「それなら一緒、でしょ」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「だったら……友達……になれる気がする」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「そしたら私もあなたも、一人じゃなくなるって、思うの」

[メイン2] 朔月 美遊 : 反応する彼女に優しく、その言葉を綴る。

[メイン2] セッカ : 「み、ゆも……」

[メイン2] セッカ : もうあんまり考えられないからただ言われたことを繰り返して
考えないこと自体 あまりない経験だった

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……うん、それに」

[メイン2] セッカ : 敵の前では、嘘を吐かれるから、ずっと考えないといけなくて

[メイン2] 朔月 美遊 : 「嘘八百、って言葉があるけど」
本で読んだ、聞きかじっただけ

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……嘘を八百個も言ってたら、疲れちゃうよね」

[メイン2] セッカ : 「……そう、だ、けど」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……うん、だからさ」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「私は嘘をつかないし、セッカさんもつかない……」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……騙されたと思って、約束してみない?」

[メイン2] 朔月 美遊 : そうして、撫でる手を止めて。
小指を差し出す。

[メイン2] セッカ : その、指、を

[メイン2] セッカ : ……怯えるような目で見た。

[メイン2] セッカ : 「で、も。しんじ、られない……」

[メイン2] セッカ : ……だって!
美遊とわたしは一緒!?

[メイン2] セッカ : 違う!

[メイン2] セッカ : 「わたしと、おまえが!!『本当』に同じなら!!」

[メイン2] セッカ : 「なんでおまえ、そんなに……優しく!!できるんだよっ!!!」

[メイン2] セッカ : 「それは」

[メイン2] セッカ :
おかしい
「『嘘』だろ!?」
 

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……私は、聞いたから」

[メイン2] 朔月 美遊 : その声に、びくりと。
一瞬ためらって、ひるみ。

[メイン2] 朔月 美遊 : どうにかして、言葉を作る。

[メイン2] セッカ : 聞いたってなんだよ そう言わんばかりに目に力を込める

[メイン2] セッカ : それでも指から目を離せはしないけど

[メイン2] 朔月 美遊 : 「私だけが言い続けて、セッカさんが嘘をついてたらきっと、聞けなかった」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「────セッカさんが、一人で寂しいって言ってたこと」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「それは、本当だと思った」

[メイン2] セッカ : 「…………っ」

[メイン2] セッカ : 今度はこっちが言葉を作れない

[メイン2] 朔月 美遊 : じっと、涙目の彼女の瞳へと見つめる。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「私も、ずっと寂しかったから」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「お兄ちゃんと会えないのは、辛い」

[メイン2] 朔月 美遊 : それは、寒くて寂しくて悲しくて冷たくて苦しい。

[メイン2] 朔月 美遊 : 「…だからもう……一人は、嫌なの……」

[メイン2] 朔月 美遊 : ぼそり。

[メイン2] 朔月 美遊 : 小声で、震えるように呟いて。

[メイン2] セッカ : そん、なの、は……!

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ : なんて

[メイン2] セッカ : 言えるわけ

[メイン2] セッカ : だって この目で見る美遊の姿が

[メイン2] セッカ : ずっと一人でいたわたしそのものだったから

[メイン2] セッカ : その わたしは 嘘なんて

[メイン2] セッカ : それが嘘だったら

[メイン2] セッカ : 今 こんな 苦しくて 泣いてるわけ

[メイン2] 朔月 美遊 : 「それとも……」

[メイン2] 朔月 美遊 : 「あの言葉は、嘘だった、かな……?」

[メイン2] 朔月 美遊 : にこりと目を細めて笑顔で見る

[メイン2] 朔月 美遊 : 唇は

[メイン2] 朔月 美遊 : 震えて

[メイン2] セッカ : 「嘘、じゃない」

[メイン2] セッカ : 「嘘じゃ、ないよ……!!」

[メイン2] セッカ : 睫毛が

[メイン2] セッカ : 濡れて

[メイン2] 朔月 美遊 : 「………せっか、さん…」

[メイン2] 朔月 美遊 : 笑顔が

[メイン2] 朔月 美遊 : 崩れて

[メイン2] 朔月 美遊 : なにも言えない

[メイン2] 朔月 美遊 : 口は開いたまま

[メイン2] 朔月 美遊 : 動かないで

[メイン2] セッカ : 言葉がないから

[メイン2] セッカ : 嘘もない

[メイン2] セッカ : けど

[メイン2] セッカ : 本当もない から

[メイン2] セッカ : 言葉じゃないもので 本当を作ろうとして

[メイン2] セッカ : 指を伸ばそうと したのに

[メイン2] セッカ : 「……よく、みえない、な……」

[メイン2] セッカ : 潤んだ視界は あまりに朧気すぎる

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……っ」

[メイン2] 朔月 美遊 : 高ぶった感情は 体を動かして

[メイン2] 朔月 美遊 : 手を伸ばす 

[メイン2] 朔月 美遊 : 届かない もっと伸ばす

[メイン2] 朔月 美遊 : 指だけじゃない 手を伸ばして

[メイン2] 朔月 美遊 : 彼女の手を 包み込むように

[メイン2] 朔月 美遊 : 掴んでみせる

[メイン2] 朔月 美遊 : 「……これで、見えなくても、大丈夫かな」

[メイン2] セッカ : 「…………あ」

[メイン2] セッカ : 不確かな視界より 確かな温かさが 『本当』が感じられて

[メイン2] 朔月 美遊 : 寂しいって ”願われて”しまったら 答えるしかない

[メイン2] 朔月 美遊 : 願望器として 聖杯として 流れ星として

[メイン2] 朔月 美遊 : 一人の友だちとして

[メイン2] 朔月 美遊 : 路地裏は 日が射さない お日様すらも見ていない

[メイン2] 朔月 美遊 : でも それでよかった気がした

[メイン2] 朔月 美遊 :  

[メイン2] 朔月 美遊 :  

[メイン2] 朔月 美遊 :  

[メイン2] セッカ :
             ・・・
だってもともとつまはじきの余り物同士。お似合いだろ?
 

[メイン2] セッカ :

[メイン2] セッカ :